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「女性専用車」について考える。 ~女性専用車が果たすべき”本当”の役割~

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2000年に京王電鉄が女性専用車を設定し、全国に広まった

女性専用車。ラッシュ時の混雑が激しい日本では、痴漢等の性犯罪の被害を防ぐためとして導入しました。その時間や区間は様々ですが、間違って乗ってしまって焦ったという男性、多いのでは? 僕もそのひとりです笑

この女性専用車、一部の男性には「男性差別ではないか。」という不満があるようです。ネット上の一部ではそれが議論の枠を超え過激化しているようで、「女性専用車賛成派は全員クズ」だの平気で出て、それに対してまた賛成派の一部が...というように結構怖いことになってたり... 

確認ですが、意見の違う相手へのリスペクトは話し合いの基本。

...話がそれましたが今回は、僕個人の意見も交えながら、女性専用車の「本当の役割」について考えたいと思います。

 

 

女性専用車の効果:「女性を恐怖感から守る」

そもそも、女性専用車両に痴漢を減らす効果はあるのかという問題。現状これに対しては、「不明」というのが正解のようです。2017年8月27日の産経新聞記事を見たところ、平成18年平成26年にかけて、電車内での強制わいせつ事件の認知件数は420件283件に数字のうえでは減少しましたが、これが女性専用車によるものとの明確な証拠はなく、また「犯行場所が移動しただけではないか」「そもそも女性専用車には抑止力がない」といった指摘もあるようです。確かに、「女性専用車があるから痴漢やめよう」とはなりにくそうですよね。但し、同時に記事には「過去に受けた痴漢被害がトラウマで、女性専用車は安心できる」といった意見も。なるほど、「女性を痴漢被害の恐怖から守る」という役割は果たしている、とはいえそうですね。一方で、「女性専用車では最終解決までには至らない」というのもまた、確かなようですね。

「女性専用車に乗りたくない」という女性も

「女性専用車は安心」という人もいる一方で、女性の中には、「専用車に乗らない」という選択をしている人たちもいるようです。なぜなのでしょうか?

理由に関しては様々なものが見つかりました。まずは女性が集まる場所ならではの理由。「化粧の匂いがきつい」とか、「女同士の争いは怖い」といったもの。席が空いた時、同時に座ろうとしたりして、「争い」みたいになること、確かにありますね。あれが女性同士だと怖いんだとか。ちなみに電車は、換気のため窓を開けるのはOKです。「そういうことじゃない!」とツッコまれそうですが...

もう一つはより深刻。「男性の目」です。先ほどの産経の記事にも、「女性専用車に乗るのはブスかババアだけ」という根拠のない意見が飛び交っていて、男性の目が気になって乗れないという声があったと書かれていました。確かに僕自身もそういった意見を見たことがあります。いっつも女性専用車の観察でもなさっているのでしょうか。。また、別の方の意見として、「通りがかりのひとから『お前みたいなブスが痴漢に遭うかよ』と実際に言われた。」とも。乗りたくなくて乗らないのはともかく、乗りたいのに乗れないのは問題ですよね。それも原因は、男性による偏見がもたらす「空気」です。

 

女性専用車は「差別」? ~反対派の意見を考える~

なぜ「差別」とされるのか

女性専用車は、女性を性的被害から守るためという明確な理由をもって設定されました。にもかかわらず、なぜ「差別」と言われてしまうのでしょうか。

1:不公平感

「女性専用車は空いているのに、隣の車両は満員。」これに不公平感を覚える人が多いようです。個人的には、これが反対派が反対派になる原因の主なんじゃないかと考えています。例えば初めに書いた「ネット上で過激化している人たち」のTwitter投稿で、貨物のコンテナの写真を貼って「女性専用車なんてこれでいいww」なんて趣旨の投稿を趣旨見かけたことがあります。随分身勝手な意見ですが、これは結局「女性専用車のほうが空いている」という不公平感が根本にあるからこそのことではないでしょうか。

 2:男性の性被害・LGBT

男性が被害者のわいせつ事件認知件数は年間100~200件ほど発生しているのだとか。また、LGBTの方、例えば男性だが女性の心を持っている人は女性専用車に乗っていいのか?という問題があります。女性の被害者を守る空間はあるのに、男性を守る空間はないのか。そもそも人を女性と男性という区別で分けること自体どうなのか?という意見です。これは確かに女性専用車の問題点だと僕も思います。ただ、これだけを理由に女性を守る場まで消してしまうのはいかがかとも思います。

3:自己責任論

これは痴漢に限らず性犯罪がニュースになるたび見られますね。事件の被害者を叩く人は必ず現れますが、こちらは2とは違ってはっきりと違うといえます。男女の違いを理解できない人がいるのは残念なことです。

4:痴漢免罪

これは非常に難しい問題です。時々テレビなどでも取り上げられますよね。ある日突然無実の罪で逮捕され、人生を狂わされてしまう。僕も男なので、怖いなあと思ってしまいます。しかし、一方で、「痴漢免罪についての行き過ぎた報道で、本当に被害に遭った人が助けを求めづらくなってしまう可能性がある」との指摘が。すべての痴漢犯が免罪という訳でも、本物という訳でもない以上、結論はつけ難いです。

ほかにも様々あるとは思いますが、一つ一つ全てを指摘するわけにもいかないので、ここまでとします。

 

「男性専用車」を導入すべきとの声も

「女性専用車」があるなら、「男性専用車」を導入すべきという意見もあります。これに関しては、女性も賛成という方が多いようです。「マクロミル」というインターネット調査会社の調査によると、賛成は、男性65%、女性73%にも上ったとか。ただ、女性専用車ですら法的根拠のない現状、企業がこれに動くというのは厳しいようです。また、男女を壁で仕切ること自体が差別ではないかという意見もあります。

僕の意見:「女性専用車」という名前は本当に適切か

僕はこの記事を書くにあたって色々な人の意見を聞いて、一つ引っかかっていることがあります。

 

なぜ誰も、女性専用車には「小学生以下に男の子、身体の不自由な方、またその介助者の男性」も乗れることにふれないの?

一番上の写真下の注意書きを読んでください。確かに書いてありますね。僕は、この時点であの車両は女性専用車と呼ぶべきではないし、差別的な印象を与えるだけだと思います。

女性専用車の「本当の役割」

それは、「満員電車に乗るのが危険な人のための車両」です。女性、子ども、障がいを持っている人、その共通点はここです。にも拘わらず、鉄道会社はこれを「女性専用車」と名付けてしまったがゆえに今起きているような議論が起き、その中の過激な意見に心を痛める女性が出てしまっている。これが一番の問題点ではないでしょうか。じゃあなぜ「女性専用車」という名前にしたかと言われれば、大阪地下鉄御堂筋線で起きた性犯罪をきっかけにできたからですね。それだけです。女性専用車の「本当の役割」を鉄道会社がもっと広めることで、女性専用車はより有益なものになるのではないでしょうか。

 

鉄道ファンの僕としても、電車の中で悪いことをされるのは嫌なものです。卑劣な痴漢がいち早く0になることを祈っています。